約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


「うん。
 小説では二通りの説がある。

 一つは有名な、
 労咳による吐血から倒れる。

 でも……今、総司の傍に居て
 総司が咳してるところは見てない。

 総司が私に隠してなければ……の
 話しだけど。


 もう一つは、
 この暑さからの熱中症。


 どちらにしても、今日の夜
 歴史通りにことが進んでいくなら
 総司は倒れちゃう。


 だから……花桜、
 総司を助けて。

 私の代わりに池田屋に行って。

 花桜をあんな酷い場所に送り込もうとしてる私は
 悪い友達かも知れない。

 でも……花桜にしか頼めないの。
 
 私は総司に帰ってきて欲しいから」



必死に縋るように、
花桜に頼みこむ。





ズルイ。




自分で行く勇気も無いくせに……
親友には代わりに行って貰いたいなんて。




でも剣を持つことも出来ない私が
あの場所に行っても、邪魔になるだけ。



それもまた事実だから。




「うん。
 私、行く。

 私なんかがついて行っても、
 本当について行ってるだけかもしれないけど、
 でも見届けたいんだ。

 だから瑠花が大切な沖田さんの事も
 ちゃんと見守るから。

 瑠花、少しいい?
 一緒に来てほしいところがあるんだ」



そう言うと花桜は、
ゆっくりと立ち上がって自分の部屋を出た。


屯所内に居る隊士たちは今も忙しなく
動いていて、土方さんたちも次から次へと隊士たちに
指示を出してる。 



そんな傍をスタスタと通り抜ける花桜。

花桜の後ろを小走りについていった先は、
私が立ち入ったことのない、奥座敷。




「花桜……」




小さく名前を呼ぶと、
花桜は頷いた。





「山南さん、失礼します。
 山波です」





襖の傍にゆっくりと正座をして花桜は
部屋の中に向かって声をかける。

花桜の後ろ、息を潜めて私も正座する。



沈黙が続くも、中からの返事はない。





「花桜、本当にいるの?」



小さく問いかけた私に、
花桜は頷いた。
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