約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


何度も説得しようとした。



だけどそんな義兄の気持ちに対して、
来島さんはそれを受け入れることなく、


『卑怯者。
 医者の坊主に何がわかる。
 もし身命を惜しんで躊躇するなら
 勝手にここに留まれ。
 
 世は我一手を持って悪人を退治する』って

言い放っちゃって、
義兄の前から立ち去ってしまった。 


*

だから……、義助の覚悟は、
もうオレでもどうすることが出来ない。



池田屋事件が起きて、
いきり立つ長州の勢いは、
そのまま、ぶつけられるだろうって。


*

晋兄は、そうやって
義兄から語られることのなかった
想いを教えてくれた。



それでも晋兄は、小さく呟いた。




「今の義助には、オレが何を言っても届かない。
 それだけの覚悟を決めて、
 アイツが決断したことだ。

 友が決めた未来が、舞の言う死に繋がるとしても
 オレにはどうすることも出来ない。

 只、オレはアイツのようには生きられない。

 オレにはオレの生き方がある。
 オレはすぐにでも京を立つ」

「京を立って、どうするの?」

「長州に戻る。
 そして向こうでオレが成すべきことをする」





そう言うと、晋兄は
ゆっくりと私の体を晋兄の正面に来るようにと
抱え起こした。


そして真っ直ぐに私を見据えた。



「晋兄?

 ……私は?」


置いて行かれるのが嫌で、
必死に繋ぎとめようと、発した言葉。


『舞も来るか?』
そう言ってくれるのだけを信じて。


だけど晋兄から
紡ぎだされた言葉は違った。




「お前はお前の未来を……」





晋兄はそう言うと、
何時もみたいに私に笑いかけながら
私に手刀を打ち付ける。




薄れていく意識の中、

『倖せに。舞……』


そう呟くのを微かに感じた。









意識を失ったまま、
屋敷を連れ出された私が
意識を取り戻したのは、
何処かわからない、山奥の大木。







その場所に、
縄で括り付けられた状態で
私は意識を取り戻した。



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