約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


そんな花桜に戸惑うように隊士たちは
気遣うものの、その思いは花桜には届かない。



その視界に何も映さないみたいに、
自分の与えられた仕事だけを機械的にこなし続ける。


まだ家事をしている時は安心できるんだけど、
その全ても終わってしまったら
フラフラと屯所内をさ迷い歩いて、
何故か井戸の前に姿を見せる。




井戸から汲み上げた水を
桶にいれては、手を洗い、
汲み上げては手を洗い続ける。



延々と手を洗い続けて居たかと思えば、
今度はいきなり着物をその場で脱ぎだして
その水の中に付け込んで、ゴシゴシと洗い始める。




花桜の手が汚れているわけでもなければ、
花桜の着物が汚れているわけでもないのに。






何かに怯え続ける花桜の傍にいって、
抱きしめてあげたいのに、私がいったら、
花桜を余計に苦しめるだけのような気がして
遠くから花桜を見つめ続けることしかできなかった。






『私が花桜に頼まなければ……』





何度も罪悪感が込み上げてくる。




だけど、そんなこと今更言っても
何も変わらない。






ねぇ、花桜気が付いて?



ほら、花桜にはこんなにも
花桜のことを心配してくれる隊士たちがいるんだよ。



この世界に来て、
私たち、何処にも居場所がなかった。



私の居場所は、鴨ちゃんがすぐに作ってくれたけど、
花桜は凄く大変だったじゃない?




居場所が見いだせなくて必死になってた
花桜の傍には、こんなにも沢山の人たちが、
花桜を気遣って、心配してくれてる。


花桜を必要としてくれてる。




花桜の居場所、
この世界にもしっかり出来てるんだよ。

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