約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「鴨ちゃんもそうだった。
私、鴨ちゃんのこと助けたかった。
生きてて欲しかった。
だけど……鴨ちゃんには、鴨ちゃんの抱いた思いがあって、
夢があって……その大切な決意の中で鴨ちゃんの未来を定めた。
私が知る歴史通りに。
助けられなかった悔しさに、
いっぱいいっぱい泣いて、総司の事も憎んだ。
だけど……今は思えるんだ。
鴨ちゃんの礎が今の新選組を支えている。
だから私は……歴史を変えなくて良かったのかもしれないし、
もしかしたら……歴史上、絶対に変えられない
運命の死も、この世にはあるのかもしれないって。
久坂玄瑞の死が、それに当てはまるかどうかなんてわからない。
だけど……久坂玄瑞が覚悟を決めて定めた未来ならば
今の舞に出来るのは、見届けることなんじゃないのかな?」
見届けることなんじゃないのかな?
そうやって続けた、瑠花の言葉が
私の心に突き刺さる。
見届ける?
義兄の死を?
私が……?
「んじゃ、舞。
私、行くね。
舞も無理せずに、ゆっくり過ごすんだよ。
舞が言う通りなら、蛤御門は近そうだから。
花桜のことも心配しないでいいから?」
そう言って部屋を出ようとした瑠花を
私は呼び止める。
「ねぇ、花桜は?」
「花桜はね……今、心の休息中。
私が無理なお願いしたから……心が悲鳴をあげたの。
花桜のことは大丈夫だから。
舞は自分のことに集中集中。
後悔だけはしないようにね」
そう言って、瑠花は部屋を出て行った。
一人部屋に残された私に蘇るのは、
義兄と晋兄の言葉。
見届ける覚悟と言われても、後悔がないようにって言われても、
今の私には何が良くて何がいけないのかすら
思考する力がついて行かない。
部屋に閉じこもり、ただ縮こまって膝を抱えながら
二人を思い続けていた。