約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
41.舞の想い 私の覚悟 -瑠花-
長州の動きが活発化して騒がしくなっている。
そんな情報が飛び交う屯所内。
私の生活は何も変わらない。
歴史上、次に訪れるのは蛤御門の変。
別名、禁門の変。
禁門の変の訪れを緊張した空気の中で待ちながら、
私はいつもと変わらない屯所内の仕事を続けていた。
朝夕に顔を出す花桜の部屋。
池田屋事件から、花桜の時間は今も進まない。
そして大木に括られて発見された舞もまた、
大きな問題を内に秘めて、苦しんできてた。
舞が長州の人たちと一緒に居たなんて。
禁門の変の訪れが告げるものは、舞の苦しみの時間。
舞の選択がどんな選択でも、私は舞を見届けたい。
本当は花桜と一緒に見届けられたらいいけど、
今の花桜にそれを求めるのは酷だから。
炊事場で、沢山のおむすびを握りながら
私の心もグルグルとこの先の未来を考える。
「岩倉さん、これで最後だ」
そう言って空っぽになった釜を見せてくれる
井上さん。
「わかりました。
じゃ、私これを配ってきますね」
お盆にのせた大量のおにぎりを持って
庭へと飛び出す。
「お待たせしました。
おむすびです」
屯所内に響くように声を張り上げると、
それぞれの時間を過ごしていた隊士たちが
次々と手を止めてお盆の上のおむすびへと手を伸ばしていく。
次から次へと、お盆が空っぽになるまで手渡しながら
キョロキョロと周囲を眺めるものの、そこに総司の姿はなかった。
「あの……総司……沖田さんは?」
隊士たちに話しかけるも帰ってくる返事は
「沖田先生、そう言えば見かけてないな」って言う
頼りない返事ばかり。
だけどその頼りない返事も、私の不安を煽るには十分すぎて。
そう……何時、症状が出始めるのかわからない
沖田総司の死因の原因ともされる、肺結核……労咳の発病。
私が知ってる書物とドラマの情報では、
この頃の総司は、戦いに出てる作品と出ていない作品に分かれてて
どっちが真実かなんて、私にもわからない。
ただ言えるのは、これから起きる歴史が私の中の真実になると言うこと。
舞や花桜のことが気になりながらも、
今の私は総司のことが気になって仕方ない。
もし神様が本当に居て、願いを叶えてくれるのだとしたら、
今の私は『総司を助けて欲しい』って告げると思う。
こんな言い方したら、ダメだと思うけど……総司の死は病死。
病死ってことは、歴史上絶対に回避してはいけない
鴨ちゃんみたいな存在ではないような気がするから。
総司を連れて、月の世界に帰るの。