約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
……舞……。
沖田さんと倖せに……花桜に宜しくって何よ……。
そんな言葉、聞きたかったわけじゃない。
鷹司邸に舞は何をしに行こうと言うの?
久坂玄瑞たちと最期を共にするため?
久坂玄瑞たちの死を見届ける為じゃなくて?
舞の言葉が脳裏から離れない。
私が舞を焚きつけた?
ううん……、知らないで時間が過ぎるより
ちゃんと見届ける強さを知って欲しかったから。
見届けることによって、無駄にならない、
そんな命の重さもあると思えたから。
だから……伝えたのに……。
舞、舞が今……思ってることがわかんないよ。
「瑠花、泣いてるの?」
聞きなれた声が聞こえて、
私はその人の方に視線を向ける。
「総司……」
総司もまた新選組の羽織を纏って私の前で笑いかけながら、
そっと指先で涙を拭ってくれる。
「舞を助けたいの……。
舞が消えてしまいそうで怖いの。
私を鷹司邸に連れてって」
鼻をすすりながら泣きつくように告げた言葉。
「瑠花、こっちに」
そう言って総司は私の腕を掴み取ると、
庭の茂みへと隠れるように連れ込んだ。
「鷹司邸って何?」
「久坂玄瑞が自刃した場所って言われてる。
ここに来たばかりの頃、舞だけが別行動だったでしょ。
その頃、舞は……久坂玄瑞や高杉晋作たちと暮らしてたんだって
大木に括りつけられて帰って来た後、聞いたの」
突然告げた、舞の過去に目の前の総司を纏う空気は張りつめていく。
「近藤さんや土方さんには報告したの?」
問い詰められた質問に私はただ首を横に振る。
その場で動こうとする総司の手首を握りしめて私の方に振り向かせた。
「大丈夫。
この戦いは新選組が勝つから。
その歴史は変わらないから誰にも言わないで。
舞は歴史を変えたいわけじゃないの。
舞一人が頑張ったって、歴史が変わるわけない。
鴨ちゃんの時がそうだった。
私どれだけ足掻いても、歴史は変わらない。
動かない。
ちゃんとわかってる……。
だから舞に言ったの。
久坂玄瑞が大切な人なら、私たちに出来る事は、
その人の最期を見届けることだよって。
だけど……そう言ったのは私なのに、
舞の言葉聞いたら、どうしていいかわからなくなって」
「加賀は何て言ったの?」
静かに問う総司の声。
「沖田さんと倖せにって。
後は……花桜に宜しく……って」
そのまま総司の胸の中に
顔を埋めるようにして泣き崩れる。
「瑠花の気持ちはわかったから。
それで君はどうしたいの?」
告げられた言葉に、ゆっくりと呼吸を整えて、
総司の顔を見つめる。