約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「花桜……私、舞の様子見てくる」
瑠花はそう言うと、
舞が向かった方向へと後を追いかけた。
私はと言うと、どうやって自分を整頓したらいいのか
思いつかなくて、もう少し打ちこみたくて道場を訪ねる。
道場では藤堂さんが隊士たちに指導する声が響き渡る。
「あっ、山波じゃん。
遅いぞ、早くそこで素振りから始めろよ」
道場にお辞儀をして入った私に気が付いて、
早々に指示をくれる。
それぞれの汗の匂いが充満する中
私は空いたスペースで静かに構えて、
ゆっくりと素振りをしていく。
いつもと同じようにしている素振りのはずなのに、
今一つ、身が入らないのはさっきの舞の言葉があるから。
前に足を踏み出しながら、後ろから前に振りだす。
順番に型の一つ一つをなぞる様にするものの
集中出来ていないのは私自身が一番よく知っていた。
「山波、集中しろ。
軸が甘い」
そんな私に容赦なく、ゲキを飛ばしてくる藤堂さん。
「すいません」
叫ぶように謝罪してまた一から、
素振りを始めようと構える。
「平助、山波の相手は僕がします」
そう言って道場に姿を見せたのは沖田さん。
沖田さんは壁際から木刀を手に取ると、
その勢いで私の方へと踏み出してくる。
振り下ろされる木刀。
息つく暇もないほどに繰り出されるスピードに、
私も必死で受け止めていく。
こちらから攻撃を仕掛けるなんて出来ないけど、
その全てを受け止めるのは小さな時から練習を続けて来た
ある意味癖的なものでもあって反射的に出す防衛本能に近い感覚だった。
それでも最後は、交わしきれなくて木刀を落とした途端、
沖田さんが構えた木刀の切っ先が私の喉元へとピタリと当てられた。
「山波、覚悟をしたわりには甘いね。
殺されるよ」
トーンダウンさせた、冷徹口調で告げる沖田さんの言葉に、
「精進します」とだけ切り返した。
指先の力も入らないほどに脱力した肉体。
重怠い疲労感。
ゆっくりと体を引きづるように道場にお辞儀を後にすると
すでに陽が沈もうとしていた。
えっ?
嘘、もうこんなに時間がたってたの?
晩御飯の準備、出来てないよ。
必死に慌てるように炊事場に急ぐ。
そこにはすでに晩御飯の準備を作り終わった
瑠花や舞たちが姿を見せてる。