約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「あっ、土方さん。
池田屋の報酬、私にまで有難うございました」
「別に礼を言われることじゃねぇ。
巻き込んじまって悪いな」
土方さんはそう言うと、また文机に向かって、
書きものに集中し始めた。
そんな後ろ姿に、静かにお辞儀をして土方さんの部屋を後にする。
舞が旅立つ時は笑顔で送り出そう。
旅に路銀は必要だよね。
私の給金、明里さんの高麗人参代にも使ったけど
少しなら舞の餞別に渡すことも出来るよね。
ちゃんと出来る事ある。
舞が自分がやりたいことをやろうとしてるんだもん。
親友の私が反対して足引っ張ってどうするのよ。
ちゃんと笑って送り出せ。
気合を入れるように、両手でバシンと両頬を打つ。
数日後、全ての旅支度を整えた舞は給金と餞別を路銀に、
私たちの住む屯所から旅立っていった。
皆に見送られながら。
舞、また会おうね。
ちゃんと、私たちが待つこの場所に無事に帰って来てね。
舞の手にも、私の手にも小さなお守り代わりの匂袋。
お揃いの匂袋のお香に、
私たち三人を魔から守ってくれますようにと
御祓いの意味も込めて。
この世界で作った新たな友情の証。
舞の旅立ちは悲しみだけじゃない。
新たな時間の始まりなのだと何度も言い聞かせながら、
姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
第二幕「運命を選ぶ刻」 完結