約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「おぉ、沖田。
今日も来たか?」
震える私に気が付いたのか
鴨ちゃんが自室から重い腰をあげて顔を見せた。
「お邪魔してます」
鴨ちゃんに礼儀正しくお辞儀をする沖田。
新選組の中で大好きだった沖田総司。
この人は……こんなにも優しい、
鴨ちゃんをお梅さんを殺すんだよ。
その歴史を知ってるのは私だけ。
私が一人で……目の前の沖田総司を葬れば
鴨ちゃんは助けられるのかな?
鴨ちゃんがくれた……簪?
ううん、スクールバッグに入ってる
筆箱に忍ばせてあったはずのカッターナイフを使ったら?
脳裏では良からぬことばかり考えてしまう。
「瑠花さん、大丈夫?
顔色、悪いけど……」
他人行儀に舞が私を心配する。
その正面には、花桜が私を覗き込む。
「ううん。
大丈夫」
二人には、そうやって笑いかけながら
私は凍りついた表情のままの沖田総司を
キツク睨み据えていた。
「って、瑠花っ」
ふいに、鴨ちゃんの大きな手が頭に触れる。
「何?」
「そんな顔、
似合わねぇぞ。
お前らも、中に入れ。
茶が冷める。
梅……酒、持って来い」
何時までもマイペースな、
鴨ちゃんにまで私のイライラは募っていくばかり。