約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
最初は遠巻きに見ていた隊士たちも
今では声をかけてくれる。
この世界で私は私の居場所をちゃんと見つけ出してる。
歩き出せてる。
自分で歩き出すことをしない人に、
手を差し伸べてくれる人は居ないんだって気づかせて貰った。
「おいっ、山波。
床掃除、手を休めて道場行って来い」
必死に廊下の拭き掃除をしていたら、
急に障子が開いて中から顔を覗かせたのは、
怖い顔した、もとい……何時も睨んでばかりの土方さん。
えっ?
土方さんらしからぬ言葉に
拍子抜けしてると目の前のその人は、
あからさまにイライラしはじめる。
「山波くん。
何時も頑張ってくれて有難うございます。
今日から貴方も本格的に朝稽古に入るといいですよ。
朝の仕事の後の余った時間に稽古をつけて貰うだけでなく、
通し稽古で、隊士たちと交わって。
斎藤くんに聞きました。
なかなかの筋のようですね。
こちらに居る土方くんも強いんですよ。
何時か手合せてして頂けるといいですね。
今日は私がお相手しましょう」
穏やかな笑みを浮かべたまま、
土方さんの背後から歩み寄ると
私の手を引いて道場へと入っていく。
滅多に山南さんが道場に入ることがないのか、
突然、隊士たちがどよめき立つ。
「さぁ、私のことは気にせずに朝稽古に努めてくださいよ。
沖田くんが、皆さんを睨んでますよ」
サラリと言葉を紡いだのと沖田さんが、
片っ端から隊士たちをぶっ倒していったのはほぼ同時。
「皆さん、だらしがないですねー」
涼やかな声が背後で木霊するのを感じながら、
私は手渡された刀を握りしめる。
ずっしりと掌に伝わる刀の重み。
それは……今まで私が使ってきた、
木刀や竹刀なんかとは違って。
「おやっ、初めてでしたか?」
「はいっ」
「花桜くんにはこちらの刀をおかししまょう。
私は赤心沖光があれば十分ですから、
花舞風~はなまうかぜ~。
飾り気も何もない無名の刀ですが私の愛刀、沖光にも負けぬ、
気迫を感じるのです。
それではまず、刀の重さになれるところから。
貴女の身を守る大切な愛刀を信じてあげるところから始めなさい」