約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く

17.つぼみの頃 2 - 瑠花 -




「梅、酒だ。酒」



そう言う、鴨ちゃんはちょっと窮屈そうな装いで腰掛ける。



近藤さんが、会津さまに呼び出されて帰って来た後から、
前川邸も八木邸も騒々しくなった。


会津藩から借りた、戦装束。
鎧一式。


ちょっぴり黴(かび)臭い、装束に身を包んだ
鴨ちゃんをはじめとする隊士たちには何処か緊張が走っていた。



会津藩の要請。


ここでも確か鴨ちゃんたちは嫌な思いをするんだ。



前川邸を出て、八木邸へと鴨ちゃんと移動した
私は、この場所で花桜と一緒に雑用を手伝ってた。



鴨ちゃんは、しなくていいって言ってくれたけど、
花桜にだけさせるわけに行かないじゃん。



忙しくなく動き回る花桜。



炊き出し。
おにぎりを作って、振る舞っていく花桜。


そんな戦前でも鴨ちゃんはマイペース。


酒だ。
酒っ……って。



「ねぇ、鴨ちゃん。
 戦前くらい、お酒やめなよ」



堪り兼ねて、紡いだ言葉。



私にとっては自然な一言なのに、
途端に、隊士たちの視線が私に集中する。



あっ、そうか。

隊士たちにとっての鴨ちゃんは、
厄介者の怖い人なんだっけ。


鴨ちゃんが貫きたい礎の為の誠。



……バカ……。



思わず唇を噛みしめる。




「おいっ、瑠花。
 お前もつげ。

 酒だ、酒。

 勝利の祝い酒くらい、前祝にしたところで
 問題ないだろう」



横柄な態度で、ぐいっと怒鳴って、
お酒をあおるように飲む。


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