約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



再び記憶の中の映像は、
鎧をつけた沢山の人たちが何処かへと
隊列を組んで歩いていく、物々しい景色を映し出す。


この場所で今から起ころうとしているのが、
『八月十八日の政変』だと言うの?





晋兄や、義兄……私の故郷の長州藩が、
京から締め出される日。



ダメっ!!
二人を助けなきゃ。



今、晋兄と義兄が必死になっても
運命は変えられない。



運命が変えられないなら生きて。


……生きて……
私の傍に居てよ……。



暖かいものが、頬を伝い落ちる。



思うままに覚悟を決めて駆け続ける。
あの人たちを殺したくない。


歴史は私が変えて見せるから。




着物の裾をめくりあげて、
格好も気にせずに御門の方へとかけ続ける。


はやまらないで。
私を一人にしないでっ!!


混乱した想いの中で、唯一守りたいもの意思は
晋兄と義兄への思い。


その想いだけで暗闇の京を駆けゆく。


そして……その歩みは、
突きつけられた会津藩のモノたちの刃で足止めされた。




「貴様、何やつ。
 怪しいもの」



一人の武士が槍の切っ先を突きつけて
冷酷な声を突きつける。




乱れた服装のまま駆けてきた私は、
怪しい曲者以外の何者でもなくて……。



「もしや。こやつ、
 長州の手の者か?」



思い思いに声を発する武士たちは、
次々と刃を重ねて私の動きを封じていく。





どうして……こうなるのよっ!!




私は……ただ……
歴史を変えたいだけなのに。




次の瞬間、殺されるのを覚悟して
目を閉じたとき聴きなれた声が聞こえた。



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