豹変上司に初恋中。
「悪い、少し肩借りる」
そんな言葉がすぐ耳元から聞こえてくる。
「……はい」
混乱しながらもなんとか頷くと、編集長はソファに投げやっていた携帯を指さした。
「携帯。鳴ったら起こして。……こそこそとかしなくて良いから。佳代は、ただの――……」
言葉の途中で、編集長は眠ってしまった。
……ただの?
もしかして、彼女じゃないのかな。
といっても、この人複数の彼女がいるっぽいしなぁ。
聞こえてくる寝息に緊張しながら、行き場のない視線を自分の手元に持っていく。
手の中で握りしめたココアはすっかり冷めてしまっていた。
――