豹変上司に初恋中。
「……今日は悪かったな」
「はい?」
急いで態勢を整えて、赤くなる頬を押さえて隠していると、編集長が弱々しく呟いた。
「巻き込んだし。呉羽、帰らなくて大丈夫か?」
……また。
「編集長が治ってくれるなら、大丈夫ですよ。こんな時くらい部下を頼ってください」
その言葉のあと、私と編集長の視線が絡む。
彼は、緩く微笑んだ。
「……ありがと、な」
お礼と共に。
それだけで嬉しくなる。
「…ところで」
にやけていると、編集長の声色が急に弱々しいものからいつもの口調に。
「今の俺が、お前には『編集長』に見えるのか?」
そう笑う編集……昴さんの顔はむしろ今風邪治ったんじゃないかと思うくらいにいつも通りだ。
ちょっと黒い感じの笑みが迫力を増す。
「あ……えっと、す、昴さん」
言い直すと、口元に軽く笑みを浮かべて頷いた。
今の昴さんは、眼鏡をとって、髪を手櫛で整えただけの無造作スタイル。
でも、やっぱり格好良い。
風邪のせいか、色気が……ん、風邪?