豹変上司に初恋中。
――
そのあと、昴さんが遅刻寸前で編集室に入ってきた。
「珍しいですね、編集長?」
記者の皆にそんな声をかけられると、「ちょっと寝過ごしてしまって、……すいません」と困ったように返していた。
まだ少し元気がないように感じる。
……やっぱり、まだ体調良くなってないのかな。
少し不安になりながら昴さんを見つめると、パチッと目が合う。
「……おはようございます、呉羽さん」
にっこりと微笑んで、昴さんが挨拶してくれる。
「あ、……えと、おはようございますっ!」
つい力んで返してしまった私を、昴さんがクスクス笑っていた。
相変わらず、ボサボサの髪と眼鏡のせいで顔の表情はよく見えないけど……
なんだか、昴さんの方から話しかけてもらえた事だけで、舞い上がってしまう。
それと、ほんの僅かな期待も。
朝の言葉の意味は聞けずじまいだから、期待は禁物だって分かってる。
もしかしたら、からかわれてるのかもしれないし!
……でも、やっぱり期待が膨らんでしまって、緊張してしまう。
「はー……」
当分は、落ち着けそうにないや。
私は机に突っ伏して、朝礼が始まるのをじっと待った――。