豹変上司に初恋中。
――
「そういえば編集長っ! 見てください、昨日村形さんに料理作ってもらって教えてもらったんですよ、レシピ。次回の原稿に使ってもいいって!」
「え、もう? 凄いな」
梓はランチから戻って午後の準備を終えるなり、素早く昴さんのデスクに向かっていく。
……梓、本気だな。
私も負けじと何か報告しようとして、何もない事に愕然とする。
何もない。
本当に。
企画の対象者の人と話すのは来週だし。
昨日今日でほんの少しは近づけたのだと思うけど……
今朝言われた言葉に希望を持って縋り付いていても、多分行動しない事にはいい方には転ばないだろう。
でも、ストーカーみたいに昴さんが休憩する時を狙って声をかけに行くのも……うう。
「頑張る」って決めたのに、このままじゃあっさり負けてしまいそう。
がっかりしながら椅子に座る。
そして、ペンを出してインクが切れかけている事に気が付いた。
あー……まだ少しなら時間あるかな。
ペンをかなり使う職業なだけに、人から借りるのは気が引ける。
私を時計を確認して、急いでコンビニに向かうことにした。