豹変上司に初恋中。
家族
目があった瞬間、私の心臓が妙に騒ぎ立てるのを感じた。
理由は簡単。
目は垂れていて、見るからに優しそうな雰囲気をもっている。
スーツの着方や靴の先まで、服に対する気配りは完璧で、彼とは少し違う、真面目そうな着こなしだ。
……でも、さっき聞こえた声は誰かを彷彿とさせた。
そっくりなんだ。この人。
「……君、昴の?」
近付いて来て、男の人は私を見下ろした。
そして、柔らかく微笑む。
私は挨拶しようと慌てて頭を下げた。
「あの、」
「ねえ、君」
「は、はい!?」
挨拶する前に話しかけられて、パニックをおこしながら返事する。
顔をあげると男の人は、私ではなく受付の人に話しかけていた。
……なんと恥ずかしい。