豹変上司に初恋中。
「あ、あの……」
「自己紹介が遅れたね。僕は笹本樹。樹で良いよ」
名刺を差し出されて、私は頭を下げながら受けとる。
急いで私も名刺を出した。
「呉羽さん、ね。昴は職場でどんな印象?」
「あ…えっと」
昴さんのお兄さんに話を聞かれるのって、なんか……
私は、昴さんの事を思い出しながら、少し緊張しつつ口を開いた。
「あの、私達部下の事も見てくれていて、的確なアドバイスをくれます。本当に、皆編集長を信頼しています。それに、…」
素直な言葉を言っていく。
樹さんは、その言葉をじっと聞いていてくれた。
「……そうか。あの昴が」
話を聞き終えると、そう呟きながら樹さんは嬉しそうに微笑んでいる。
きっと良いお兄さんなんだろうな、なんて思っていると。
「……呉羽」