豹変上司に初恋中。
急いで出ると、聞こえてきたのは昴さんの声だ。
低音で、少し気怠そうな声。
聞くだけで心臓が高鳴るこの声を、間違えるはずがない。
「お疲れ様です、昴さん」
「ん、お疲れ。……今日、葉書の最終チェックだったな。呉羽が最後か?」
昴さんは口早に告げて尋ねる。
誰もいないと分かっているけど、念の為軽く周りを見回してみる。
「はい! 私が最後です」
「よし」
昴さんは安堵したように言うと、お礼を言って切った。
既に切れた受話器を置いて、少し考えてみる。
……もしかして、編集室に今から戻って来るのかな?
パッと浮かんだ考えに、私は机の上を見てみる。