豹変上司に初恋中。

昴さんの顔を見上げると、真剣な表情で私を見ている。

本人を前にして言うのは恥ずかしい、という考えを捨てて。

私は口を開く。


「ちょっと強引で、怖くて冷たいような振る舞いなのに、でもやっぱり優しい所」
一つ一つ、思い返すように。

「あと、私達部下の事をよく見ていてくれて、全員の事を大切に思ってくれている所。それとー」


その後の言葉は、続かなかった。


向かい側から、昴さんの手が伸びて来て。

ほのかにシトラスの香りがした。

抱き締められた、と判断するのには時間がかかった。


その力が強くて、少し苦しい。

でも、私はそれを言わなかった。

状況は飲み込めないながらも、それを言ったら昴さんが離れていってしまうと分かってるから。
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