豹変上司に初恋中。
タクシーを拾おうと辺りを見渡した。
「……」
待っている間、じわ、と涙が浮かんでくる。
気の迷い、で片づけられるなんて。
好きな所を聞かれて、真面目に答えた私が馬鹿みたい。
そもそも、何で聞くの? 何で抱きしめるの?
期待しない方がおかしい。
でも、婚約して。しかも村正ホールディングスの令嬢なんて、勝ち目ない……
……。
あれ?
一通り泣いて、少し冷静になってさっきを振り返って。
不意に、『保険まで用意して』という言葉が、今更私の頭の中にスッと入りこんできた。