豹変上司に初恋中。
「おい、呉羽! 原稿は!?」
「あ、すいません。これです」
「よし、お疲れ」
原稿を奪って、立ち去る男性を見送って、息を吐いた。
呉羽 華織(くれは かおり)
……一応ここ、雑誌「SnowWhite」の編集部に勤めている。
ここは、ファッションだって取り扱ってるわけで。
「あ、呉羽さん」
不意に声をかけられた。
「え? あ、編集長……」
編集長、というのが笹本昴さん。
上から下までのスタイルを見て、私は言葉を詰まらせた。
今日も酷い。
当然のようにシャツはインで、ズボンなんて上に上げすぎて少しくるぶしが見えている。