豹変上司に初恋中。
「俺が知ってる料亭の中では1番上手いんだ」
あ、やっぱりそうなのか。
納得しながら、また部屋を見遣る。
……それにしても。
聞いていいか迷いながら、口を開いた。
「編集長って……お金持ち、なんですか?」
私の少しバカっぽい質問に、編集長は眉をひそめる。
「は?」
「だって……」
ベンツだし、こんな高級な老舗で奢るとか言っちゃうし。
モゴモゴと口を動かしている私を余所に、編集長は少し考えるそぶりを見せて。
「……まあ、昔は真面目だったからな。ある程度蓄えがあるんだよ」
「そう、なんですか」
昔って……まだ二十代間際のはずなのに。
そう考えつつも、頷いた。