豹変上司に初恋中。
「あんまり会いたくもないしな」
「え?」
自嘲気味の小さな声で、呟いた言葉。
よく聞こえなくて、聞き返した。
「いや。良いから荷物持ってこい」
口の端を持ち上げて促す編集長に、もう一度聞く事も出来ず。
「は、はい。ありがとうございます」
私はお礼を言って荷物を手に取った。
―――
昨日と同じ位置に車が止めてある。
何も言わずに編集長が助手席のドアを開いてくれた。
その動作は凄く自然で、私は呆けたように見つめてしまう。
「……ほら」
「え、あ……失礼、します」
促されるまま、乗り込んだ。