豹変上司に初恋中。
――
そして。
6時半、私は会社の玄関前から少し離れた所に立っていた。
しばらくすると、ベンツが私の前に止まる。
「あ……」
『笹本さん』だ。
目で合図されて、慌てて乗り込む。
「…お、お疲れ様です」
私がそう言いつつシートベルトを付けたのを確認すると、笹本さんが車を発進させた。
「お疲れ。悪いな付き合わせて」
「全然平気です!」
力強く首を振ると、笹本さんがクス、と笑う。
なんだか少し照れ臭くなって、話題を探した。
「……あ! 今日はどこに行くんですか?」
そういえば、聞いてなかった。