豹変上司に初恋中。
複雑
「お待ちしていました」
いつかのように、出迎えてくれる女将さんは相変わらずの美しさ。
うう、敗北感が半端ない。
「急な予約で悪かったな」
優しげな笑みを浮かべて、笹本さんも挨拶してる。
ふと、女将さんと目があった。
瞬間、その目が怪訝そうに細められ、眉がひそめられる。
……え、なんだろう。
私が首を傾げるより早く、女将さんはついと視線をそらした。
「……昴さん、いつもの部屋を準備していますわ。こちらへ」
「ああ、ありがとう」
「……」
昴さん、というワードについ反応してしまう。
下の名前で呼び合う仲なの?
いや、常連なら……でも、それでも普通は下の名前では呼ばないし。
こんな綺麗な人と…そういえば、前の修羅場の彼女も美人だった気が。
自分と比べてみる。
………。
私、とんでもない人を好きになってしまったのかもしれない。