豹変上司に初恋中。
―――
「協力してもらえるか?」
笹本さんは今回の経緯を話して、女将さんに尋ねる。
困った顔をするかと思いきや、女将さんは満面の笑みを浮かべた。
「勿論。昴さんの頼みでしたら」
「! ありがとう」
嬉しそうに笑う笹本さんを、女将さんは嬉しそうな顔で見つめる。
絶対に女将さん笹本さんの事好きだよ。
……ちょ、私完全アウェイじゃないですか。
少し慌てていると、笹本さんが
「少し時間を空けた方が良いか? そうなら、日を改める」
と思いついたように言うと、それに女将さんが勢いよく首を振って答えた。
「いいえ。レシピならいくらでも頭に入っていますから。今日で終わらせられます」
「そうか。すまない」
心から助かった、というような表情を浮かべて、その後笹本さんが私を見遣る。
「呉羽、パソコン!」
「っ、はい!」
やっと仕事が回ってきた私は元気よく声を上げてパソコンを取り出した。