豹変上司に初恋中。
昴さんは彼女を見下ろして、はっきりと言い放つ。
「迷惑だな。用がないなら尚更」
その声に少し驚いてしまう。前と同じ、低い声。
怖い雰囲気があった。
「そう……」
その人はとても悲しそうに、しゅんとする。
「す、昴さ……」
私が声をかけようとすると、彼はチラと後ろにいる私を見て、安心させるように少し表情を崩して微笑んで。
自分の口元に人差し指を立てた。
……どういう、事?
「……その子、彼女?」
「さあ。関係ないだろ」
すかさず聞いてきたその人に、昴さんはまた冷たい声で答える。
「紹介してもくれないのね」
「必要ない」
「……そっか、複数の中の一人だから?」
え。突然の彼女の言葉に目を見張る。
私は違うけど、それ、もし本当に彼女だったら傷付くんじゃ……
「……つくづく、嫌な奴だったんだな、あんたは」
微かに、さっきまでの冷たい声じゃない。とても悲しそうな声が私の頭上から聞こえた気がした。