僕らが今いる今日は
「それ、恐らく平岡のことだな」


練習が終わり学校からの帰りに、昨日のことを含めて美術室での出来事を桐島にできる限り正確に話した。

こんなことを嫌な顔一つせずに聞いてくれるのは桐島だけだ。


「誰、ヒラオカって」


全く、聞いたことのない名前が桐島から出てきて、精一杯頭の中の記憶を辿ってみるがやはりヒラオカという名前は聞き覚えがない。


「美術部の平岡真思だよ。

この前、何かのコンクールでもいい賞取ったみたいだし、仙蔵のじいさんのお気に入りだから、美術部のお前みたいな存在なんじゃない」


「分かんねえよ、その例え。

美術部?」


「凄いってことだよ。

というか、陸上意外に興味の無いお前にとっては美術部の存在すら気付いていなかっただろう」


いくら陸上だけしか興味が無いと言われても、さすがにうちの高校に美術部があったことくらいは・・・

今、知った。


「それに平岡は俺と同じ1組だしな。

6組のお前は分からないのも当然かもな」


うちの高校の校舎は特殊で正方形の箱みたいな形になっている。

1組はその一片の北棟校舎の隅にあり、6組は南棟校舎の1組とは反対の隅にあるため、1組と6組は一番離れている。

そのため、余程仲のいい奴でなければ1組の生徒とは関わりがなく、俺にとっては顔を見たことがある程度であって、ヒラオカマコトの存在は全く知らなかった。

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