僕らが今いる今日は
「それより、もう少しで県総体だな」


桐島が真面目な表情になる。

今月末には県高校総体があり、ここで上位入賞すれば全国高校総体、インターハイに一歩近づく。

逆に入賞できなければ、3年生はインターハイへの道は閉ざされてしまう。

俺と桐島は記録的には県総体は入賞は安全圏だと言ってもいいが、本番では何が起こるか分からない。

例え、記録がいくら良くてもこの時期はみんなピリピリしている。


「今週の日曜が最後の調整だな」


日曜日には県立大学が主催する小さな大会、通称「県大記録会」がある。

県総体の2週間前とあって、いい調整になる反面、お互いの調子の探り合いにもなったりするので参加しない高校もあり、ここでの順位はあまり意味を持たない。


「俺・・・」


立ち止まった桐島の表情は何とも言えなかった。

県総体を前にして不安の表情のような気もするし、どこか寂しいという感じもする・・・


「どうした?」


そんな表情をされると、こちらも不安になってしまう。



そう思ったのが桐島にも伝わったのか、いつものクールで大人びた表情に戻り、小さく微笑んだ。


「何でもねえよ」


そうして、足早に俺の前を歩いた。


(ごめんな、飛翔)


きっと、俺の前を歩いたのはあの表情を俺に見られたくないからだろう。

だけど、今お前が何を思っているかまでは俺は分かってあげれない。

こんな頼りない主将でいつもお前に迷惑をかけてばかり・・・



だから、せめて俺自身のことだけはお前に心配かけないようにするからな。
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