僕らが今いる今日は
ヒラオカマコトと話している桐島に必死でSOSの視線を送ると、桐島はちょっとだけ強い視線を返してきた。


その前にやることがあるだろ


そういう視線だ。


(分かっているよ)


今度、ヒラオカマコトに会ったら先週の美術室のことをちゃんと謝るように言われていたが、まさかこんな場所を桐島が用意しているとは思わなかった。


「キハラさん、ちょっとごめん」


依然として積極的に迫ってくるキハラノゾミに断りをいれて、ヒラオカマコトの前に立つ。

いざ、目の前に立つと何から言っていいか分からなくなる。


「あのさ、先週は・・・」


「相変わらずだな」


謝ろうとしたそのとき、後ろから聞き覚えのある声がした。

聞き覚えがあるどころではなく、一番会いたくない人物の声というのは瞬時に分かり、できれば無言でこの場から立ち去りたい。

だけども、この状況ではどう足掻いても立ち去ることはできるはずもなく、仕方なく後ろを振り返った。


「こんにちは」


桐島と一緒に棒読みの挨拶に形だけの会釈をした。

残念ながら俺の予想は外れることなく、声の主はやはり一番会いたくない人物だった。



全国でも名高い神城(かみしろ)学院の陸上部監督・・・
< 18 / 43 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop