僕らが今いる今日は
4継女子の準決勝2組目がついにスタートした。



1走の高津は専門種目は走り幅跳びだ。

大人しく、誰にでも優しい高津は3年のなかで唯一のフィールド種目で、後輩からは優しいお姉さん的存在で慕われている。

1年のときはトラック種目とフィールド種目で練習が分かれると上級生からパシリにされたり、いじめられていたらしい。



練習がきつくて辞めそうな後輩に誰よりも親身に相談にのっていた。



記録が伸び悩んで苦しんでいるのを見かけると、すぐに声を掛けて励ましていた。



そして、自分自身がどんな辛くても、決して辛い顔や嫌な顔一つせず、優しい笑顔で毎日練習に来ていた。





だけど、高津は県総体で一度も飛ぶことはなかった・・・





巡り合わせが悪かったと言えばいいのか、陸上部としては良かったと言えばいいのだろうか、走り幅跳びで高津よりも記録がいい後輩が3人いた。

一つの種目に一つの高校が送り出せるのは3人までだから、4番目の高津は自ら辞退を申し出た。

和美ちゃんは高津に出場するように勧めたが、高津自身が2年のときに一つ上の先輩よりも記録がいいのに出場できなかった経験があることを理由に辞退を撤回しなかった。

今回の4継も最初は辞退していたが、他の3人と後輩が強くお願いしたことで出場することになった。

高津は上辺だけじゃない、中途半端でもなく、本当の優しさを持っている。



その高津の優しさで坂高陸上部はどれだけ救われただろうか・・・
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