僕らが今いる今日は
3走の多摩は1500メートルを専門にしているだけあって、一緒に練習やトレーニングをする機会が多く、女子部員のなかでは一番仲がいいと思っている。

それは多摩が底抜けに明るくて、女子のムードメーカー的な存在だから俺でも気軽に話しかけることができるのだろう。



陸上部が沈んだ空気になったときはいつも明るい雰囲気に変えてくれた。



大会で悔しい結果になった選手がいたら、真っ先に声を掛けに走っていた。



そして、自分が悔しい結果になっても、辛いことがあっても、絶対にみんなの前では笑顔を絶やさずに明るく振る舞った。



ほんの少し前に1500メートルの決勝を走ったばかり、入賞できず最後のレースとなってしまい、本当は泣きたいはずなのに笑って「ごめん」と手を合わせてみんなの前に戻ってきた。



次の種目が始まるころには着替えを済ませて、出場する坂高の選手を応援していた。

他の3人が辞めなかったのは、きっと多摩がいたからであって、それを3人は分かっているだろう。

多摩は自分自身が辞めなかったのは他の3人がいたからだと思っているだろうし、3年のこの関係が自然なのはやはり多摩が作り上げたものだ。



多摩は高校を卒業したら、親の仕事の都合で海外に行ってしまう。

それは去年から決まっていたことで、本当ならそのときすぐに海外に行くはずだったのだが、陸上だけは高校最後までさせてほしいと泣きながら親に言ったという話を3人から聞いたことがある。

もしかしたら、このリレーに一番思い入れがあるのは多摩なのかもしれない。



それでも、周りに気を遣わせないよう普段と変わらずにいる多摩の明るさは強さも混じっている。

そんな、みんなを笑顔にする多摩の明るさと強さが本当に羨ましい。
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