僕らが今いる今日は
麻生が6位でゴールし、この瞬間に4人の県総体、そして、坂咲高校陸上部としての最後の大会が終わった。

トラックに向かって深々と麻生が頭を下げると同時に、他の3人も頭を下げた。



4人の様子を見ようとサブトラックへと移動すると、ちょうど4人が競技場から歩いてくるところだった。


「相澤ぁ」


こちらに気づき、大きく手を振りながら走ってきた宮前は笑顔で、後から続いてくる3人も悲しみや涙はなかった。


「相澤、私たちのレース見ていてくれたか」


少々、4人の表情に呆気に取られていることなど気にせずに両手をつなぎ合わせてきた。

この様子だと、ここに来る前にもう泣いてきたのだろうか。


「幅跳びの私には、リレーは・・・」


「結衣はまだいいよ。

私なんか、1500だからスプリントはきつくて何人に抜かれるか冷や冷やだったよ」


高津が言葉に詰まったところで素早く多摩がフォローを入れてきた。

あまりにもいつも通りの光景すぎて逆に違和感があるくらいだが、こうやっていつも明るく笑って幾多の苦労を乗り切ってきたのだから、これがこの4人なのかもしれないな。


「でもさ、この4人で走ったんだよ。

この4人だから走れたんだよ。

ねっ、麻生ちん」


高津と多摩の二人に宮前が肩を掛けて、満面の笑顔で3人は麻生を見た。

しかし、その笑顔が一瞬にして戸惑いへと変わった。
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