僕らが今いる今日は
「ああ、泣いたらスッキリした」


しばくして4人は泣き止み、宮前が思い切り背伸びをして先ほどとは違った満面の笑顔を見せた。

時計を見ると、今日の最後の種目のスタート時間を少し過ぎたころだった。


「やばい、そろそろ着替えないと帰りが遅くなるよ」


それに気付いたのか、4人は慌てて更衣室へと走り出した。

いや、正確には3人で怪我をしている麻生だけはゆっくりと歩いている。

きっと、誰にも心配されたくないのだろう、痛いはずの足を引きずることはせずにちゃんと踏みしめている。


「あ、そうだ」


麻生がこちらを振り返ったとき、ほんのわずかだが涙が零れ落ち太陽の光に反射して綺麗に映った。

いくら泣いてもやはり悔しく、悲しいものは変わることはないのだろうが、さきほどから麻生にだけは少しだけ違和感を感じるのだが、それは怪我をしていることだけなのだろうか。

少しだけ視線を落としたあと、こちらに向きなおしたときには笑顔に戻っていた。


「相澤、坂高陸上部としてまだ走れること羨ましいよ。

最後まで走れる奴なんてほんの一握りしかいないんだから・・・

頑張んな」


最後まで走れる奴はほんの一握りしかいない・・・



坂高陸上部として走れるということに重みを持たせる言葉だが、この言葉が胸の中に抵抗なく入ってきた。


「麻生ちん、ずるいよ。

それは私が言いたかった」


先に進んでいた宮前が早足で戻ってきて後ろから麻生に抱きついた。


「頑張れよ、相澤」


二人でじゃれ合いながら更衣室へと向かっていった。



高津、宮前、多摩、麻生・・・



本当にありがとう。
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