僕らが今いる今日は

初めての展開

バスの中では2年生が小声で話す以外は静かだった。



リレーを走ったメンバーは4人とも気持ち良さそうに寝ていて、走り終えた充実感と泣き疲れてすっきりしたようだ。

競技場を出てから桐島は何かを考えているのだろうか、ずっと窓の外ばかりを見ていて隣にいる俺に一言も話してこない。

俺も5000メートルの決勝で疲れているから、それが逆に有難い。

もしかしたら、桐島のことだから俺に気を使って何も話さないのかもしれない。



レースは散々だった。

正確にはレースコンディションが散々だった。



リレーが終わったころから風が強くなり、5000メートルの決勝のときにはそれにかなり大粒の雨が加わっていた。

結果的には1位でゴールしたが、タイムは悪く、納得のいくレースには程遠いものだった。

ただ、そう思っているのは俺だけではない。

ゴール後の表情を見ると、きっと沢木も同じことを思っているに違いない。

今日のレースは全くの参考外、俺と沢木の勝負もノーカウントだ。



バスが停車し、2年生が立ち出しバスから降りようとするのを見て、もう学校に着いたことに気づく。

どうやら、俺と桐島も麻生たちと同じように寝てしまっていたらしい。

だるい体を引きずるようにして最後にバスを降り、部室でミーティングの準備をしようとしたときだった・・・
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