僕らが今いる今日は
「高津、もう今日で部活は引退だろう。

お前の進路のことだけど、ここじゃなく進路指導室に場所を変えよう」


口早にそう言うと、高津の手を強引に掴み進路指導室へと引っ張ろうとした。

その瞬間、俺のなかでぶちっと何かがキレる音がした。



さっきまで競技場で最後のレースを終えて涙を流していた、その高津に対して軽々しく『引退』という言葉を口にするな。

お前には高津が流した涙の意味など微塵も分からないだろう、2年間頑張ってきた涙が見えないだろう。


「おい」


思い切り怒鳴ってやろうとしたとき、桐島が左肩に手をやり止めに入った。

冷静な桐島がいつも通り引き止めてくれようとしてくれている気持ちは分かるが、さすがにこれだけは怒りが治まらない。


「止めるな、桐島」


左肩に乗せていた手に力が入ったと思った瞬間には思い切り後ろに押し出されていた。

その力があまりにも強く、暴力的だったためバランスを崩して転びそうになったところを麻生に支えられた。


「じっとしていな。

ここは私らの出番じゃないよ」


言葉の先は俺だが、視線は強く桐島に注がれていた。
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