僕らが今いる今日は
いつも冷静な桐島。

だけど、その冷静な桐島がほんの一瞬だけ見せたいつもとは違う一面。


「あんな桐島、初めてだな」


「本当。

あんなに感情が高ぶっている桐島くんは初めて」


その声に思わず驚いて、もう一度バランスを崩しそうになる。

いつの間にか俺の後ろには木原望が立っていた。


「木原さん、いつからそこに」


「相澤くんたちがバスから降りたときからずっとここにいたよ」


バスから降りたときから・・・

全く気付かなかった。


「桐島くんは常に沈着冷静ってイメージだったけど、もしかしたらさっきのほうが本当の姿かもね」


右手を唇に当て、どこか納得したように相槌を打つと、今度はこちらに視線を移した。

上から下まで一通り見られ、小さくため息をつく。

次に見せた表情が何かに吹っ切れたような、区切りをつけたような、そんな表情に見えた。
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