カランコエ
 

ピピピピピピピ…


「……夢か」

 携帯のアラームが鳴り響く中、ぼんやり天井を見る俺は、いつものような気持ちではいられなかった。
 夢見が悪い。瞼の奥にはまだ赤が焼き付いている。

 アラームを止めようと携帯を見て、ようやく気付いた。

「ああ、そうか…近いのか…」

 11月17日、土曜日。あの日まで、あと2週間。
 カレンダーには、二重丸。決して忘れないようにと、それを買った日にすぐ付けた。忘れる筈がないけれど。

 起き上がって、仕事に行く支度をする。パジャマを脱いで、パーカーを着て、ズボンをはいて。パンとコーヒーだけの簡単な朝食を済ませて、鞄を掴む。

「…ごめんな」

 靴をはいて家を出る前に、必ずすること。


靴箱の上に置いたキーホルダーに謝ること。



 
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