華麗なる偽装結婚
俺は一瞬、陸を睨んだ後、阿美子に視線を移した。
陸に?
彼女を?
……………。
………冗談じゃない。
会社はもちろん、阿美子だって渡せない。
彼女は俺の………、……。
「…社長?」
阿美子が不思議そうに俺を見上げる。
「…社長、じゃないよ、阿美子ちゃん。
怜って呼ぶんだよ」
そう言ってその頬に軽くキスを落とす。
ポッと赤らむ顔が可愛くて思わずクスクス笑ってしまう。
「もう…!…止めて下さい…」
――俺の………?
俺は一体、どうしたいのか。
どうなりたいのか。
分からない。
ただ、彼女は、俺の……、
……優秀な秘書だから。
だから、陸には預けたりなどしない。
ただ、それだけだ。きっと。