華麗なる偽装結婚
………ものすごくいい事……。
そうだろうか。
いくら社長に心惹かれていても偽りの結婚が本当に幸せな事なのだろうか。
つかの間の期間で終わると分かっていても、彼を夫と呼べる事を私は喜ぶべきなのか…。
だけど社長は夫婦である間は私を好きになるように頑張る、と確かに言ったわ。
もしかすると、本当に本物の夫婦になれる時が来るのかも知れない。
――「……あの、私、怜さんのところに行って来るわ」
私はそう言って立ち上がった。
「あらあら。
お式はもうじき始まるじゃないの。
待ちきれないの?
ホント、信じられないわ。
いつも社長に小判鮫みたいに張り付いているうえに、更に結婚までするのに、こんな僅かな時間さえ一緒にいたいだなんて。
ええ、ええ。
行ってらっしゃいよ。
ほんと、婚約してからも当てられっぱなしだわ。
そりゃ常磐専務も不思議がるはずよね。
これまでの社長のキャラじゃないってね」