華麗なる偽装結婚


かすみが呆れ顔で私をからかうと達郎も更に言う。

「ほんと、まさかこんな結末が待っていただなんて改めて未だに信じられないよ。


だけどお前、この僅かの間に本当に綺麗になったよなぁ。
社長もそんなお前をいつだってうっとりとした顔で見てるしさ。


本当にお互いに好きで堪らない、って感じだよな」


「やだ、何がうっとりよ。
そんなはずないでしょ」


慌てて否定する。
そんな訳ないわ。

社長は私がタイプじゃないから花嫁に選んだのよ。

絶対に好きにはなれないから。

終わるために、
余計な感情をお互い持たないために、

………私が一番適任だったのよ。


「まあ、その花嫁姿、早く見せてらっしゃいよ。

本当に綺麗よ。

おめでとう、阿美子」


かすみがうっすらと涙ぐんでお祝いを言ってくれる。
達郎も優しい笑顔で私を見つめてくれる。


………私は、何だかやりきれなくなって二人から目を逸らして俯いた。





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