華麗なる偽装結婚
私が立ち上がったままボンヤリとしていると達郎が言った。
「ほら、かすみ。
阿美子を行かせてあげないと。
どうしたらいいのか分からない顔で固まってる。
行けよ。
俺達も会場に戻るから」
達郎は私の背中をそっと押した。
………行かないと。
式の前に社長に正直に気持ちを打ち明けよう。
拒絶されても、嫌な顔をされても
気持ちを隠して夫婦の真似事をするよりはましだわ。
社長の側でこの思いを殺して暮らすなんて、辛すぎる。
私はドレスの裾をガバッと持ち上げると二人を振り返った。
「………私らしく…、いたいから。
…これからどうなったとしても、
心配しないで」
「……?阿美子?
…どうしたの……」