華麗なる偽装結婚
『新郎控室』と書かれたドアの前に立ち、乱れた息を整える。
この中に佐倉社長がいる。
今日、私と結婚するために、おそらくすでに純白のタキシードで身を包んでいるだろう。
周りから見れば形ばかりは幸せで愛し合う二人に見えるだろう。
これまで生きてきた中で最も幸せで輝いている一日を迎えると思われているに違いない。
軽く息を吸い込んでドアをノックしようと片手を上げた、
その瞬間。
「いいの〜?本当に。
呆れた人ね」
……?
部屋の中から微かに漏れ聞こえる女性の声。
「いいんだよ」
…社長?
「だけどあなたの花嫁さんは何だか堅物そうね。
……あんなのと本気で結婚するつもり?
何だか息がつまりそう」