華麗なる偽装結婚
………!
つい聞こえた会話に上げかけた手が止まる。
何?
何を言っているの?
「…どうせなら私が今から花嫁の支度をしましょうか?
あなたが結婚すると聞いてどれだけ傷付いたと思ってるの?」
「葉子。
今は君の冗談に付き合う心境じゃない。
それに誰でもいい訳じゃないよ。
彼女を悪く言わないでくれ」
「相変わらず冷たいわねぇ。
……今でも私はこんなにあなたが好きなのに」
「俺も君が好きだったよ。
しばらく前まではね」
「今は奥さん一筋って訳?ふふ。冗談でしょ。
……いいわよ、それでも。
あなたが結婚しても関係ないわ。
私、諦めないから。
………もう一度、あなたを振り向かせてみせるわ」
「………やめておけよ。
……自分を大切にしろよ」