華麗なる偽装結婚
――「葉子…、そろそろ行かないと。
……降りて」
俺は葉子をそっと膝から下ろすと、隣の大鏡を見た。
今日で阿美子は俺の妻になる。
今、葉子とキスして分かった。
やっぱり阿美子とは違う。
俺が欲しいのは彼女だけだ。
「じゃあ私、行くわね…。
また……連絡してくれるんでしょう…?」
期待のこもった口調で訊ねてくる葉子を振り返り笑顔を湛えて静かに言う。
「…悪いけど、今の時間でよく分かったんだ。
君は俺には必要ないと。
欲しいのは妻になる阿美子だけだ。
……君に…何も、感じなかった」