華麗なる偽装結婚
「兄さん、阿美子さんは俺が部屋まで連れて行くよ。
兄さんは休んでて」
陸が彼女の肩をそっと抱き寄せる。
……。
「阿美子さん、歩ける?
ゆっくりでいいから」
「ありがとう、陸さん」
ニコッと阿美子が陸に笑いかける。
「……!
……駄目だ!
阿美子、こっちに来て」
俺は二人に駆け寄り阿美子の腕を掴んで引っ張りつけた。
「…怜!……痛い」
「兄さん!」
最低だ。
自分のしている事はもちろん、全部分かっている。
葉子と過ごした直後に、阿美子と陸が共に立ち去る事を怒る権利などない。