華麗なる偽装結婚
……コンコン。
扉をノックする音。
ドアの向こうから声がする。
「そろそろ式場の方に移動をお願いいたします」
社長は私の頬に軽くキスをしながら
「はい。今出ます」
と言った。
「…泣かないで。
そんなに嫌がらなくても、いずれ解放するから。
君がそうしたいならね。
……今はこれしか言えない」
「……」
「さあ、行こう。
君の協力あっての式だ。
やっとこれで会社を父さんにいずれ返せる。
こんなに献身的な秘書に恵まれて俺は幸せ者だよ」
彼はにこりと笑って私の手を取り歩き出した。
「…社長…」
「ん?」
「…あなたがそんな風で良かったです。
私の間違いを正してくれるから……」
「……?どういう意味?」