華麗なる偽装結婚
五・解かれた封印〜偽装と真実の狭間で〜


……「社長、本日のご予定ですが、本日は午後より佐倉会長が鑑査にお見えになります。

午前中のスケジュールを全て延期して白紙に致しましたので会社の決算資料と開発資料に目を通していただけたらよいかと思います」


「は。じいさんが来るの?
何でまた突然」


彼は手元の稟議書から目を離し、驚いた顔で私を見上げた。


「佐倉物産のここ近日の業績上昇には目を見張るものがございます。
会長も興味がおありなのでしょう」

彼から目を逸らし、淡々と伝える。

彼を直視出来ない…。


「…ふぅん。
……興味ね……。ま、じいさんが興味を持ってるのは会社よりももっと他の事だろう」


「………は」


「ふふっ。
……君だよ、阿美子。
じいさんは孫の嫁が可愛くて仕方がない。
相手にしてほしい一心で鑑査なんて慣れない事をするのさ」





< 164 / 252 >

この作品をシェア

pagetop