華麗なる偽装結婚



会長が仲を疑う原因はそんなあなたにあるのに。
まるで私がいけないみたいに言う事にも腹立たしさが込み上げる。


しばらくして社長室から彼が出てきた。



「さあ。準備が整いましたわ。
私は秘書から妻へと変身致します。

あなたの思いのままに命令して下さっていいですよ。
言われた通りに致しますから」


「……。
何だかひっかかる言い方だなぁ。

……何か怒ってるの」


彼はチロッと私を見て舌で唇を舐めた。

ドキッ。
たったそれだけの社長の仕草が私を狼狽えさせる。

「…怒るだなんて。
社長が毎日何処で寝ているのか心配なだけですわ」

この人と言葉を交わす度に自覚してしまう。
……強く、彼を求めているのだと。






< 169 / 252 >

この作品をシェア

pagetop