華麗なる偽装結婚
会長が仲を疑う原因はそんなあなたにあるのに。
まるで私がいけないみたいに言う事にも腹立たしさが込み上げる。
しばらくして社長室から彼が出てきた。
「さあ。準備が整いましたわ。
私は秘書から妻へと変身致します。
あなたの思いのままに命令して下さっていいですよ。
言われた通りに致しますから」
「……。
何だかひっかかる言い方だなぁ。
……何か怒ってるの」
彼はチロッと私を見て舌で唇を舐めた。
ドキッ。
たったそれだけの社長の仕草が私を狼狽えさせる。
「…怒るだなんて。
社長が毎日何処で寝ているのか心配なだけですわ」
この人と言葉を交わす度に自覚してしまう。
……強く、彼を求めているのだと。